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(2016年次大会レポート)デンマークではなぜイノベーションが起きやすく、社会課題が解決しやすいのか?

大会企画 A-1

  • デンマークではなぜイノベーションが起きやすく、社会課題が解決しやすいのか?
    • 大本彩・坂本由紀恵(株式会社Leare)
    • 2016年7月30日(土) 10:45-12:00

2016年次大会「組織イノベーション」概要はこちらから。
プログラムの詳細はAdobe_PDF_file_icon_24x24年次大会パンフレット(PDF, 30MB)をご覧ください。

レポート

まずは坂本氏からデンマークという国が紹介されました。サイズとしては「九州に福岡県民が暮らしている」。日本の2倍の国民負担率(税金負担)によって、教育や雇用機会が広く提供されているそうです。その特徴を一言で表しているのが「フレキュシリティ」。フレキシビリティとセキュリティの合成語ですが、容易に解雇される一方で、手厚い学び直しの機会が提供される仕組みが構築されているようです。

その後、二つの地方の社会課題解決事例が紹介されました。北ユトランド地域(オールボー市)の地域産業再生の取り組みでは、伝統産業から脱皮して新たな産業を興すため、風力発電やICT、人工知能などの産業クラスター(集積)を促進しています。構想の早期段階から「クアトロヘリオス」と呼ばれる産官学民4セクターの相乗効果を生かすことで、支援先は600社を超え、37の海外ネットワークを構築し、1年間で470名の雇用を創出するなど大きな成果を上げています。

続いて、大本氏からオーフス市の事例が紹介されました。ここで行われたのは図書館の再構築。職業教育を受けていない人の増加や識字率の低迷、ITリテラシーの世代間格差などいった問題が発生する中、80年以降減少し続けていた図書館を、この町のイノベーションセンターとして再構築するという取り組みが始まったとのこと。自治体が主体となって、様々な世代の多様な意見を取り込んで未来の図書館のビジョンを作るなど、デザイン思考で課題解決を加速する取り組みを行い、昨年図書館はオープンしました。その結果、4か月間で50万人もの人が来場するなど、大きな成果を上げているそうです。

最後に、このデザイン思考を柱に据えるビジネスデザインスクール(Kaospilot)が紹介されました。混沌(カオス)の状況をあえて作って、プロジェクトを進めさせることで、実践、内省、理論、学びという学習ステップの効果を極大化しているとのこと。大本さんの留学時代のエピソードも紹介され、非常に興味深い学びの場づくりの取り組みだと感じさせられました。

今では幸福度の高さで知られる北欧デンマークですが、昔からそうだったわけではありません。自分自身の姿をありのままにとらえてそれを強みに変えていくしたたかな戦略は、ビジョンと危機感を共有した民度の高い国民が、ボトムアップで支えているように思えます。日本の将来のあり方にも大きな示唆を得られる発表でした。

レポート作成:平井豊康(広報委員)

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