組織開発(OD)とは

ODの特徴

1. テーマと手法の多様性:

OD(組織開発)は変革の実践を中心テーマにするので、理論研究から実践手法まで含めて広い領域を対象にします。変革に直面する人や組織が多様で、応用する手法も行動科学の蓄積に応じて多様なため、両者の組み合わせとしての変革実践は、状況に応じて無数に存在しうるからです。

変革実践家(組織内外のコンサルタント)とクライアントが協働で変革する場合を例にすれば、コンサルタントが持つ変革手法の多様さと、クライアントが直面している状況との対応関係から、効果的と思われる組み合わせを手法として選び、実践します。とりわけ主体的に人が変わる状況を扱うため、普遍的な正解を想定せずに、試行錯誤を通じて理性的に感情的に変わる過程をクライアントに体験させて、変革努力を自発的にできる状態にする事がODの中心課題となります。そのため同じ状況でもコンサルタントによって応用手法が異なり、また逆に同じコンサルタントでも状況しだいで手法が異なります。

2. 研究領域の位置づけ

変革状況と実践手法の単なる累積がODと思われるかもしれません。しかし、多くの人文・社会科学研究者が多様な社会現象に潜む普遍的な法則を求めて、具体事例の調査と研究を繰り返したように、第2次大戦後、多くのOD実践・研究者達が教育・ビジネス分野で、より良い変革実践を可能にするために、一見すると混沌とした人の変わる過程に潜む法則性と、効果的な変革実践手法の体系化に挑戦してきた歴史があります。こうした努力の集大成がOD発展の歴史であり、もちろん人文・社会科学研究の一端を担う領域です。

3. ODの基礎理論

ODは人が変わる理論研究を基礎にしますから、幅広い研究領域や実践手法と関わります。主な領域として、まず社会心理学や社会学のセルフ・パーソナリティ、認知、態度、社会化の領域です。次に教育学の大人を対象にした学習や、経営組織論の動機付け、リーダーシップ、異文化マネジメントの領域です。さらに脳生理学の発達やコミュニケーション技術の進歩から、人や集団・組織の感情や対話に関する領域も関わりを深めているように思います。

4. 意外な理論的関連性

OD(組織開発)という用語に聞き覚えがなくとも、部分的に違う視点から紹介されているものが少なくありません。例えばワールドカフェ、 フューチャーサーチ、 フューチャーカンファレンスは、いずれも、ワイズボード、オーウェンというODリサーチャー達の、ラージグループインターベンション(大規模組織変革)理論研究の成果です。またワークプレイスラーニングは、アメリカのASTDが提唱している仕事を通じたAdult Learning(大人の学習)で、基本はノウルズが提唱したアンドラゴギー(andragogy)をヒューマンリソースデベロップメント(人材開発)として体系化したものです。同じ大人の学習領域では、MITのピーター・センゲ達のラーニングオーガニゼーション(学習する組織)が、システム全体の有機的持続的変革の理念型として、60年前にクルト・レビンがMITでしたのと同じ事を、長年にわたり理論研究と応用実践している蓄積もODの一部に含まれます。またアクションラーニングは、古くはマニュアル学習の意味合いが強かったのですが、ノースイースタン大学のレーリン達が、具体的プロジェクト業務で変革を体験する理論研究の成果です。このほかにも、ケースウエスタンリサーブ大学、ミシガン大学やペンシルベニア大学やネブラスカ大学やMITのようにポジティブリサーチの視点から、アプリシエイティブインクワイアリー(Appreciative Inquiry)、ポジティブ組織論、ポジティブ心理学、ポジティブ組織行動論、支援(helping)などの紹介は、すでになされております。ODに対して意外な印象を持たれるかもしれませんが、こうした理論研究や応用研究を基礎とするのがOD(組織開発)です。

5. ODとは何か?

包括的な定義リチャード・ベックハードRichard Beckhard (1969)
「(1)計画に基づいて、(2)組織全体を対象にして、(3)トップマネジメントがリードして、(4)組織の健全さと有効さを高めるために、(5)行動科学を応用して組織プロセスに計画的に介入する事がODである。」

OD Network(US)の定義

ODとは、組織やコミュニティに連鎖的な変化を起こす価値観主導だがダイナミックな手法である。とりわけ組織やコミュニティや社会が望ましい状態に変わり続ける能力を構築する努力である。

6. OD Network活動を支える原則

あらゆる組織が、その存在理由と社会的貢献を理念や価値観を明確にして、存在や貢献を独特な行動原則として組織内で共有するように、OD Networkも理念や行動原則を持ちます。

6-1 Practice(実践)原則:

OD実践は、独自の価値観と原則に基づいて人の行動に具体的に働きかける諸活動である。
OD(組織開発)実践は、変革実践家(内外コンサルタント)とクライアントが、より良い存在を目指して、共に学びながら発展するコミュニティで実践されます。同時にコンサルタントは、OD Networkというコミュニティや大学・企業が開催するセミナーで、新しい理論研究と実践手法を学び、より効果的な変革をクライアントと実践するために定期的にコミュニティに参加します。つまり、コンサルタントークライアントは、人が変わる理論研究を具体的に応用する社会的機能を果たすコミュニティであり、OD Networkは、コンサルタントを学びで結びつける社会的機能を果たすコミュニティであり、両者がOD価値観を基礎に結びつく事で、理論研究は実践的価値を裏付けられた事になります。

6-2 OD Networkの運営原則
  • ODとは進歩し続ける実践領域である。
  • OD実践家が、将来必要になる能力・技能の方向性を示す事
  • OD実践家が、自らの能力・技法を評価する基準となる事
  • ODリサーチャーが、新しい研究課題を考える基礎となる事
  • クライアントが、OD実践家を評価する基準の一つを示す事
6-3 OD Networkメンバーが共有する価値観
  • 敬意を持って受け入れる事:
  • クライアントと実践家が実践活動で協働する事:
  • クライアントの成長発展に真正である事:
  • 専門家として独自の存在であるための果てしない学習:
  • クライアントの自立を促す事:
  • 調査研究に裏付けられた理論の応用:
  • 実践的探索と自省的評価が循環するアクションリサーチ:
  • 実践内容と結果よりも実践過程を重視する事:
  • 多面的データに基づく変革実践である事:
  • クライアント重視:
  • 自立した存在としての健全さと有効性を高める事: