登壇者:桑原寛二(NineDomains Institute株式会社 代表取締役社長)
日 時:8月31日(日) 13:50〜15:20
場 所:D401号室

講演内容

1.事例概要(K社の組織開発)

医療機関向けソフトウエア開発の企業、社歴28年、社員約200名、創業オーナーの理念経営のもと売上・利益とも安定経営を続けていた。2012年から3年間かけて次世代へ事業を継承していくにあたり、社長・役員共に可視化できていない部署ごとの顕在的・潜在的に存在する複雑な課題を、短期間で客観的な事実として確認し、解決に向けて前進する必要があった。

2.OD実践者が行った診断や働きかけ

面談により5つの部署に内在するそれぞれ異なった課題と会社全体に横たわる根本的な課題が立体的に絡み合っている状態を確認し、このような複雑な状況下で客観的かつ偏重や主観的バイアスの無いデータを収集・分析し事実に基づいたフィードバックをクライアントに提示するためにナインドメインズアプローチ®(「以下9D」)を用いた。
9DはTOLAT℠という診断ツールを用いるが、これは人間関係の問題にシステム理論アプローチで取り組む場合に生じる実務的な課題の多くを克服している。TOLAT℠の主眼は、どこを「改善」すべきなのかを正確に知ることを目的とし、チーム(または組織・会社)全体の機能のレベルと9つの領域それぞれの機能の健全度を知ることである。
今回の事例では、改善すべき課題が複数多岐にわたったため、TOLAT℠の分析結果を土台にし、9D独自の詳細な「働きかけの手法(I&P)」を基に、状況全体に取り組むための総合的な戦略をクライアントと共に立てる。具体的には、会社全体の風土改革のために最も影響力のある16名の次期幹部候補グループに対する体験学習形式の集合研修を毎月、計1年間実施し、各部署のそれぞれの課題と会社全体の課題解決を自身達の優先課題として同時に取り組んでいただくことで合意した。
 通常のODプロセスと異なる9Dの一つの特徴として、データ収集の段階から改善のための「働きかけ」が始まるという点が言える。9Dサーベイは、グループや組織に変化を起こす最初の「きっかけ」ではあるが、この調査で使われている質問自体の効果によって、成長の道程やグループ・プロセスの第一歩が始まるという事が9Dを公式に発表する前の米国でのケーススタディで明らかになっている。

3.働きかけやアクションの影響・効果

社長から「今回の「働きかけ」による成果により、2013年度は過去30年の社歴の中で最高益を上げた」ことを全社イベントで発表された。アフターの診断(TOLAT)結果にも客観的な改善がみられた。

登壇者情報

全職歴の内、約28年をリーバイス、ナイキ、エスカーダ、スウォッチグループなどの外資系日本法人に勤務。2002年からは外資系企業の経営者として様々な規模や歴史を持つ企業の運営に携わる。リーボックジャパンでは2年半で黒字化、True Religion JapanならびにZoomSystems Japanのスタートアップを軌道に乗せるなど海外ブランドのビジネス拡大に寄与した。
2011年、人生の新たなチャプターとしてNineDomains Institute(株)を設立。米国の診断型ODアプローチの認定資格を取得しコンサルタント・トレーナー・コーチとして活動すると共に、「個と全体」をテーマに探求の旅を続けている。
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