ロバートマーシャク博士ワークショップ レポート | OD Network Japan

活動

ロバートマーシャク博士ワークショップ レポート

1月30日に開催された、ロバートマーシャク博士によるワークショップのレポートになります。

今回も50名近くの多様な背景を持たれた方にご参加頂き、大変有意義な場とする事ができました。

マーシャク博士講演「世界における組織開発の歴史と最新のトレンド」

①組織開発 (OD)とは、何か?

まずはODとは何なのか、歴史的背景と大事にされている考え方についてお話いただきました。

「ODは1950年代当時のアメリカにおける組織の問題解決や状況改善のために、価値観や多様な理論群や視角として始まった。」
「ODは、多様な問題や状況を扱う事で発展・成長しました。理論や方法論の基礎にある、幅広く学際的、実践的な変革として存続し続けている。」
「“O”はあらゆる種類の組織(システム)であり、ある目的を達成するために存在する人間組織としての社会的諸単位。」
「“D” は、変革と向上についてであり、何かに向けて成長し志を高く掲げ、仕事の方法や人生の質を高める事。」
「ODを実践する人は自分自身についてよく知らなければならない。それは変化をもたらす道具として自分が一番大事だから。」
「ODの実践家は、事前に予定していた変革案を状況の変化に応じて実践過程で変更することがある。つまり変革実践過程で得た新しい情報に基づいて、常に事前に構想した変革案を変更する(カスタマイズ)こと。」

②アメリカにおけるODの歴史

続いてアメリカのODについて解説いただきました。
現在、いろんな分野やタイプの手法が存在しますが、歴史の流れを見てみると一つ一つがルーツにつながっており、とても意味があるように見えました。

③OD介入のタイプ

OD介入について説明していただきました

  • アクションリサーチ: ODの基本概念
  • 人間関係介入(Human Process)
  • 技術-構造的介入(Technostructural)
  • 人事制度への介入(Human Resources)
  • 戦略的変革への介入(Strategic Change)

合理的で理解しやすい課題でなく、通常扱われない複雑で理解されづらいプロセスもODには含まれるようです。

④OD実践者に必要な能力

「必要な基礎知識は、組織行動論、個人レベルの心理学、グループダイナミクス、マネジメントと組織論、調査・研究方法論、文化人類学、変革理論、変革方法と介入方法、ビジネスの基本など…」
「必要な役割は、熟練したコンサルタント、熟練した診断家(diagnostician) 、熟練した社会科学研究者、熟練した介入者、熟練した教育者、指導者、熟練したファシリテーター、熟練したコーチなどたくさんありすぎ、一人では無理です。ODの熟練した実践者自身が組織化されてないと介入できないでしょう。」
「ODの実践には、自身の思考と行動様式に依存するため、必然的に自分を扱う”use of self”ことになる。実践者が自分感情や存在をキチンと管理、調整することで他者のロールモデルになれる。スキルだけでなく人間的な成長が求められる。」
「”use of self”とはベストな支援や援助を提供するめに、感覚器(データ取り込み)、意味生成(理解)、行動喚起(実行)の“用具”として存在する事。」
実践者にはテキストから学ぶスキルだけでなく、人間的成長も求められるようです。

質疑応答

質問「『変わることって本当に必要なんですか?』と言われた。アメリカでも同じなのでしょうか?変化の必要性についてどう説明されるんでしょうか?」
マーシャック博士「官僚からは変化は悪いことだ言われることがある。政治のほうが変わっていくので、変わらない安定したものが必要なことがあるという考え方もある。しかしながら、望む望まないにかかわらず最終的には物事は変わっている。」

ダイアログ

できるるだけ多様なグループになるように、A4の紙に自分の役割について書いて席替えし、6-7人で7グループを作りました。
コンサルタント、企業内での人事担当、研修担当、講師、学生、教師などによる多様なグループでダイアログが行なわれました。
グループで、まず自己紹介とマーシャク博士の話を聴いて気づいたこと、感じたこと、発見したこと、考えたことをそれぞれ発表し、続いて、「日本における組織開発の望ましい未来」をテーマに対話をおこないました。

対話後の共有

各グループの対話から浮かびあがったものを全体で共有しました。

  • 「相手を思いやる、相手に関心を持つ傾聴。仕事をしていてすごく楽しめる。コミュニケーションが円滑であること。仲間と共感し信頼を築いていく。」
  • 「変革し続けていくために必要なことはバリュー。バリューを見つけるためには、1、進んでいないという時に痛みを感じる。2、早くそこに行きたいとあこがれる。組織の中で自由に発言できる風土を作るには、対話における安全性の確保。安全性を確保できる組織になれば、声を上げるリーダーも出てくる。そこから変革する。」
  • 「OD道:空手道をやっていた。空手の先生に言われたのは、まず強くなる目的がある。その先に優しくなる目的がある。まだその先があって、なぜなら道だから。ODも答えもなければゴールもない。ただそこを進む。」
  • 「人を信じる、信じられることが大切。根拠のない、説明のできないくらいの信頼が必要」
  • 「失敗しない組織とは、トップダウン型の組織にならずに、個を高める組織。自分達のやっていることを認めて、他者の責任にしない。コミュニケーションで解決する、場作りが大切。トップは目標を出して、その下の人は個の力を主体的に場に生かしていく。」
  • 「ODって何なのって結論がでない。ではどんな組織になるといいのか? 個々が元気にやる気をもってかかわる組織」
  • 「ODは多面的で範囲が広い。HRMにも戦略にもかかわる側面がある。果実(成果)、枝(戦略)、幹(HRM)、根(OD)ではないのか。ODのルーツが大事にされてないとすれば、手法の部分で満足してしまっていて、根っこを大事にしない組織が多いからなのではないのか?」

マーシャク博士からのコメント

ODを作ってきた過去の人たちは、ODが何であるか考える必要がなかった。やっていることそのものがODだったから。
次の世代である私達はODが何なのか考えることに苦労した。しかし全員が同意する必要はない。違いを認め合えればいいのだ。皆さん、日本人の心や文化に合うODを見つけていけばいいのではないのか。」
「スキルやテクニックも大切だが、その下に流れる倫理が大事である。自分の望みやニーズをまず捨てること。ODの実践者にはとても力強く人とかかわるスキルがあり、人々がより良く生きることを目指して行く。」
最後に「今日一日を通して私にとって主要な学びとは何か?」について、1分間のセルフリフレクションをし、グループごとにそれを共有しました。

西川代表理事によるまとめ

「ODの価値観を実現させる条件は、1、私達が理想とする社会や組織にODは、どのような姿であるだろうか。2、ODだけが出来る貢献ってなんだろうか?を考えてみる事。」

マーシャク博士ごあいさつ

「とても暖かい気持ちといい思い出を持って帰ります。日本語は出来ませんが、皆さんのスピリットは受け取りました。そのスピリットが心を暖かくしてくれました。ODの日本の将来について語られているこの場にいられて、とてもうれしいです。ありがとう。」

ワークショップまとめ

ODNJが海外講師を招く試みが、多くの人のご協力で盛会に進められた事は、ODに関わる一人として心強く感じました。講演していただいたマーシャック博士と、参加された皆さんに、スタッフ一同感謝いたします。

マーシャック博士の真骨頂は、膨大な文献レビューと自身の実践家としての体験とを重ねて、組織開発の展望から根と幹と枝葉とに整理するという、知 的労力の求められる領域で活躍されている事です。それだけに言葉に深みがあるように思いましたし、私自身自分の立ち位置を再確認したと感じました。失礼な がら60半ばにして止む事のない情熱には、自ずと周囲を奮い立たせる熱意を感じさせます。

年末に体調を崩されましたが、「40年ぶりに訪問する日本で待っている人々や意義を考えると延期できなかった」と、終わってから話されていた事が耳に残りました。

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